季節が変わった

すきな映画をみました

メイド・イン・ホンコン/香港製造 という映画です。

 

めぐりあっちゃった、みたいな展開に弱いんだとおもった。額を流れる汗も、重たいまぶたも、垢抜けない服装もぜんぶいとしい、この前みたときと同じシーンでまた胸がきゅーっとつまって苦しくなった。すきな人の影響で、考え方やすきなものが変わるの、すごく美しいし、あたたかいことだとおもう。恋愛をすること、人と愛し合うことは、幸せに包まれるのと同じくらい苦しさと闘うことでもあり、不器用なわたしはいつも終わりが始まる予感に怯えてしまうけれど、愛しあったまま死ぬのならばふたりは永遠に愛しあった状態でいれる、と気づいた。ロマンチックだ。

 

さいきんのわたしは少しおかしかった。じぶんの感情がわからなかったり、食べものに味がしなかったり、気づくとボーッとしていることが多かった。けれど、やっと自分を取り戻してきている気がする。急ぎ足でおうちへ帰ってずっと気になっていた映画をみたり、友だちとダラダラくだらないことを話したり、窓からさす日差しで身体をあたためながら猫とまどろんだり、そんな穏やかな日常がたまらなくしあわせにおもえて、この瞬間をぎゅっと抱きしめていなきゃ、という気持ちにさせられる。日常の風景こそ美しい、と、ビフォアサンライズの中でイーサン・ホークが言っていた。普段なら気にも留めないような時間は、人肌みたいに温かなきもちが心に芽生える瞬間だった。それを愛しくおもえた事実を、忘れたくはないなあ。

嵐のように過ぎ去った夏が終わって、秋が来る。時間が止まればいいのに、とおもう瞬間が何度もあった夏だった。人生のなかで何番目に大切な夏になるのかはわからない。いちばんだと思った夏も、時間が経てばただの思い出になってしまうことをわたしはもう知っているし、感情や記憶もたいしてあてにはならない。

それでもわたしは人間なので、今年の夏も楽しかったな と、ちょっぴりセンチメンタルになりながら思い出を抱きしめて、また秋へと踏み出していくのです。